足痩せ ダイエットからの重要なお知らせ
最近の研究から、二種類の脂肪細胞は共に、そのインシュリンの作用を阻止するような物質を何種類か分泌していることがわかってきたのである。脂肪細胞がふえて、そのような物質が多くつくられるようになれば、インシュリンがいくらあってもホルモンとして働かなりなってしまう。
問題なのは、インシュリンが働かなりなった結果、「インシュリンが足りない」という誤った信号が発せられ、すい臓で過剰につくられるようになってしまうことである。すい臓が一生のうちにつくることのできるインシュリンの量には限りがあることから、枯渇が早まり、糖尿病の発病が促進されることになる。
ところで、血液中の中性脂肪がエネルギーに変換される際には、ある種の脂肪分解酵素が働く。インシュリンは、その酵素の働きを補助するという仕事もしている。そのためインシュリンが作用しなくなると、脂肪分解酵素も働かなりなく、結果的に血液中に中性脂肪が分解されないまま停滞していく。脂肪の消費がとまれば、細胞中の中性脂肪もたまったままとなる。
つまり脂肪細胞の過剰な存在は、インシュリンの働きをとめるという作用を介して、肥満に拍車をかけているのである。
ポイントをまとめると、脂肪細胞がふえるとインシュリンが作用しなくなる、血液中に中性脂肪が停滞する、肥満に拍車がかかる、インシュリンが枯渇し糖尿病がおこるということになる。
これは、「インシュリン抵抗性」という言葉で語られる理論で、メタボリックシンドロームという言葉がしめす本来の意味なのである。
因果関係の証明は難しい
ただしインシュリン抵抗性の話は、あくまで理論である。肥満がどのような病気の原因になっているかという具体的な話になると、まだ異論も多く、実態はほとんどわかっていないといってよい。
「肥満と病気はまったく無関係」と断言している研究者さえいるのである。意見がわかれる理由の一つは、肥満にかかわる因子が無数にあって、病気との因果関係を証明するのが難しいからといえる。
たとえば、BMIと心筋梗塞の発生率をくらべ、両者に強い比例関係がみつかったとする。
しかしこの結果だけから、「BMIが大きい人は心筋梗塞になくやすい」と結論することはで
きない。なぜなら、一般に年をとるにつれ運動量が減少するため体重はふえてくるものであり、かつ誰でも年齢とともに、コレステロール値、血糖値、血圧などが上昇していくからである。
とすれば、対象者の年齢にばらつきがある場合、年齢の問題であるかもしれず、BMIと心
筋梗塞発生の間に直接的な関係がある、とはいえなくなってくる。
この間題をクリアするには、たとえば、二〇~二九歳、三〇~三九歳、四〇~四九歳と年齢ごとにグループ分けをして、BMIと心筋梗塞発生の割合を比較してみるしかない。
しかし問題はこれだけにとどまらない。男女で違っているかもしれないし、食事の内容に差があるせいかもしれない。さらに運動、喫煙、飲酒などの習慣にも違いがあると、考えるとき限りがなくなってしまう。
結局、どのようにデータを分析しても、肥満と病気の関係を証明するのは難しいのである。
以下、肥満と病気との関係について調べた大規模調査の結果をいろいろ紹介し、結論をまとめておきたい。その多くは欧米で行われたものである。
まず肥満との関係で問題となるのは、インシュリン抵抗性の理論からもあきらかなとおり、
糖尿病である。糖尿病は生活習慣病の代表であり、いま先進国で急増している病気でもある。
日本でも六人に一人が、その体質をもっているともいわれている。糖尿病とは、ひと言でいえばインシュリンが不足した状態であるが、原因や症状によって二つのタイプに分けることができる。
一つは、学童期に発病するタイプで、急激に進行し、インシュリンが完全に枯渇してしまうものだ。そのため、人工のインシュリンを毎日、注射で補うしかない。このようなタイプの糖尿病はく型糖尿病、あるいはインシュリン依存性糖尿病とよばれ、すい臓の細胞が何らかの原因で破壊されてしまうためにおこる。
原因については諸説があってよくわかっていないが、同じ一型でも、さまざまな経過をしめすものがあることから、複数の遺伝子異常が関係しているらしい。
もう一つのタイプは、成人になってから発症し、インシュリンが徐々に不足していくか、あるいはインシュリン抵抗性が生ずることによっておこるものである。多くは中年以降に発病し、ゆっくりと進行する。このタイプを2塑糖尿病、あるいはインシュリン非依存性糖尿病という。
2型糖尿病も、何らかの遺伝子異常が背景にあると考えられていて、それに生活習慣上の問
題が加わって、はじめて発病する。したがって遺伝子に異常がなければ、生活習慣に問題があっても発病にいたることはない。逆に、遺伝子に異常があっても、生活習慣に問題がなければ、おそらく発病はしない。
遺伝子のどのような異常が関係しているのかは、まだよくわかっていない。患者数が極端に多いことを考えると、異常の種類も無数にあるように思われる。く型と2型のほかにも、別の病気や薬の副作用で誘発されるタイプもある。
いずれにしろ、血管の内面が絶えず高い濃度の、ぶどう糖にさらされていると、内皮細胞
が少しずつ壊れていく。そのため、太い血管ではコレステロールがたまく動脈硬化症となる。細い血管では、血管が破綻し、出血をくりかえすようになるのである。眼底の血管でこの変化がおこれば、失明にいたる。心臓では冠状動脈が閉塞し、心筋梗塞となる。さらに腎臓では、毛細血管がつぶれ、腎不全になってしまう。腎不全は、尿がまったくつくられなくなった状態で、人工透析や腎臓移植をうけるなどしないと、そのままでは生きていくことができない。
糖尿病によっておこる動脈硬化症は下肢に多く、ときには足を切断しなければならないこともある。また高濃度のぶどう糖によって末梢神経が障害されると、痛覚が失われたく、勝朕にたまった尿が排出できなくなったりする。
肥満による健康障害は、実は子どものころに、すでにはじまっている。そこで、子どもにおける肥満の問題点をまとめておきたい。
アメリカでは、子どもの2型糖尿病が急増していて、貴近五年間で十倍以上にふえたとい
う統計もある。日本でもここ数年、あらたに糖尿病と診断される青少午のうち、約三分の一は2型といわれている。この割合は、二〇年前の、実に三六倍にもなっているのである。
ひと昔前、青少年の糖尿病といえばく型ときまっていたが、状況がまったくかわってしまった。
生活習慣病が青少年にまでひろがってしまったということであろう。そこで知りたいのは、
肥満がこのような変化の原因になっているのかということである。しかし、すでにのべたとおり、データを表面的に分析しただけでは、原因かどうかの証明はできない。
この間題を解くための唯一の科学的な方法は、次のようなものである。
まず、肥満の子どもを大勢集める。その人数は少なくとも数千名、必要である。それを二つのグループに分け、一方には何らかの方法で理想体重にまで減量させ、他方にはそのままの生活をつづけてもらう。この二つのグループを大人になるまで追跡し、病気になるかどうかをくらべるのである。
当然、二つのグループ間で背景因子が異なっていてはならない。年齢や性別をそろえておかなければならないし、身長、健康状態、食事の内容など、BMI以外のさまざまな条件を同じにしておく必要がある。
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